質問集:演奏中の足のタップは、どのようにしたらいいでしょうか?

質問1:8ビート・ピッキングはIn fourでもよいでしょうか?
ロックギターを弾きたいので、今まで足のタップは8ビート・ピッキングと同期する(足の上下とオルタネイトピッキングが同じ一往復になる)ように練習していました。

本ではIn twoを勧めていますが、EX-3やEX-4はIn fourのほうがやりやすく感じられます。手の移動や弦の押さえ方が未熟なせいもあると思いますが、まずIn fourで弾けるようになってからIn twoに移行するというやり方は「あり」でしょうか。

回答1:

それでもかまいません。しかしin two(二拍子で取る) とin four(四分音符で取る)には、二つの考え方があります。

一つは、演奏する時のテンポとの関係です。

テンポが速くなれば、in twoが便利です。in fourでは、足がバタバタしてしまいます。

最初の内は、なんでもin two は難しいです。

ただ、in fourが簡単、という事は、それだけ初心者でも可能ということです。

初心者の場合、in two とin fourの分岐点は、テンポに依ります。テンポが速くなればなるほど、in fourでは、足もバタバタとして大変だからです。

また、熟練度、成長度に依って、かなり遅くてもin twoで取れる人もいます。

ただ、スローバラードなどのテンポでは、in four にはなりますが、超スローテンポの場合、ノリを倍のスピード感で弾く場合、途中で、in eight(八分音符で取る) に切り替えて弾く事もあります。

こうした足のステップは、基本的には、ドラマーが右足のバスドラムで叩く1拍、3拍目の2分音符のビートと同じです。

また、in twoで慣れた、と思っているテンポでも、譜面を読む際に、ミスせず正確に演奏したい、と思った時に、in fourに切り替えて弾く場合もあります。

もう一つは、“ノリ”との関係です。

こうしたin twoや in fourの足の動きは、そのまま身体全体の動きになり、本来のbeatとも密接に関係している「ノリ」との関係があります。

Rockによくある8beatのテンポなら縦横の上下運動を意識したin fourが中心になりますが、Jazzの速いテンポや、Samba,サンバの左右の動きを意識したリズムは、in twoで取るのが基本です。

身体全体で大きく揺れるin twoの“ノリ”から出される様々な細かで大きなリズムのアドリブと、より細かくin fourで取った身体の“ノリ”から生まれる“tight、タイト(きっちしした)リズムのアドリブでは、”ノリ“が違って来ます。

足のタップが細かくなればなるほど、演奏は、機械的な“ノリ”に近づいて行きます。

ラテンミュージックなどは、in twoが中心ですが、これを演奏する学生ブラスバンド部の演奏は、譜面を正確に読みたいという意識から、in fourの演奏になるため、本場のラテン系ミュージシャンの“ノリ”とは、全く違うロボット的な演奏にはなりがちです。

従い、足のタップを変える事は、基本的に身体の揺れる動きを変える事と関係し、“ノリ”が変わって来る、というのが本来の意味です。

Rock musicだけしかやらないのなら、in fourだけでもかまわないでしょう。

通常、RockのミュージシャンがJazzのノリが苦手なのは、こうした身体のノリの違いも関係しています。


質問2.:

質問2:足のタップはかかとで踏んでもよいか?
28ページで足のタップをつま先で踏むことを勧めていますが、つま先を上下すると脛からかかとにかけて痛くなり、長く続けることができません。

つま先を軸にしてかかとを上下すると疲れずに練習できます。

このやり方でもかまわないでしょうか。以上ご教示願います。

回答2:

かまわないです。

ただ、かかとを支点にしても平気な人がほとんどですから、「足先を踏む」という行為の他に、「足先を上げる」という運動も交互に意識してやります。

慣れていないと、この「足を上げる」という筋肉運動ができないために、筋肉痛になってしまっているのかもしれません。ドラマーの場合も同じです。

ドラマーの場合は、バスドラムは、ペダルからかかとを浮かせて、つま先だけでペダルを踏んでいますから、ひょっとしたら、もっと大変かもしれません。

という事は、“不慣れな筋肉運動”という事になりますから、がんばって克服するしかありません。

また、つま先を支点にかかとでタップするする方法は、幼児が良くリズムを取る時にやっている方法です。

この問題は、直立した時に、どこに重心を置いて立っているか、という問題にもなります。

ギタリストの場合は、エレキギターを肩から下げながら、直立しますが、この場合、つま先に重心を置いている人は、かかとが上がりやすいですし、かかとに重心を置いている人は、つま先が上がりやすいです。

という事は、幼児は、つま先に重心を置いてリズムを取っていたりするわけです。

世の中には、かかと重心派、つま先重心派と、さらには、その中でも足の小指寄り、親指寄り、と分類している理論もあります(4スタンス理論)から、自分に合ったやり方でやるのが良いでしょうが、個人的には、基本に従った方がいいと思います。この場合は、かかと支点です。

なぜなら、ドラムを叩く場合、かかと重心やつま先重心は関係ありません。

ドラムのバスドラムもハイハットもつま先で踏んで鳴らすしかないからです。ペダルを、かかと側に置いて鳴らすわけにはいかないからです。

自分の好みの重心にこだわるなら、そもそも、楽器はもちろん、すべてのスポーツに向き不向きができますし、さらには、先生の選別にも関わって来ます。自分が、つま先派、と思う生徒が、かかと派の先生を選ぶことが無意味になります。

そもそもからして、そのスポーツの創設者からして、自分と違う重心派、だとしたら、それを学ぶ必要もなくなってしまいます。

ドラムにしても、かかと派にとっては、つま先を使う、ドラムという楽器は意味がない、という事になってしまいます。

しかし、世の中の一流ドラマーをチェックしたら、「つま先支点派」も多かったかもしれません。

修行事、というのは、本来の日常的な動きでは、できないから修行しなくてはいけないわけです。

というわけで、どうしても“かかと支点”が難しいなら、自分独自に、つま先支点に切り替えればいいとは思います。

しかし、人間の成長は、様々な筋肉運動に慣れて行く過程ですから、幼児でも可能なつま先支点から、大人にしかできない、かかと支点に変える過程も大事なトレーニングとは思います。

また、腰かけて弾く場合の椅子の高さや、立って弾く場合は、どうか、というケースでも確かめて下さい。

楽器を弾く際の正しいフォームは、スポーツの世界と同じで、普通の動きとは別のもの、という事を理解する事です。

クラシックギターやクラシックピアノなどは、もっと厳格なフォームが要求される世界ですから。

ドラマーの「かかとを浮かせて、バスドラムのペダルを踏む」なんてのも。

慣れないと筋肉痛です。

ギターを弾く際の足のタッピングは、さほど大袈裟なものでもありませんが、50代の東京のSkype生が、カスタネットを踏みながら練習していました。

私の教室でも昔、右足にカスタネットを付けたスリッパを履かせて弾かせていたこともあります。

質問3:YouTuberのジャズ講義レッスンで、「足を踏むのは、2拍目と4拍目がいい」という事を言っています。

1拍目と3拍目でないのでしょうか?

回答3:YouTubeは、無料ですよね?

YouTube講師の目的は、生徒への勧誘ですから、無料で本当に有益な情報を流す人は、さらなる、どんでん返しを企んでいるのではないでしょうか?

YouTubeというものは、フォロワーが多くなれば、調子良い事をついつい言ってしまうものです。

調子に乗ったYouTuberの失言は、最近でもいろいろな騒動を招いていますが、フォロワーが何万、何十万、とならないと、なかなか、問題として上がりません。

盗作したメロディーでもヒットしなければ、そのままスルーされます。

盗作したメロディが、これまでの日本国内だけでなく、外国にまで及んでしまった時に、問題になるわけです。

足のタップが、1拍3拍でなく、2拍4拍になるって、、、

論外です。

教育というのは、”発展性”です。

2拍4拍で、足を踏んでいた子供たちは、まず、ドラマーには成れません。

ドラムのバスドラムは、まず、1拍目と3拍目に足を踏み(tap)します。

また、この子は、ダンサーを目指すにも厳しい。

ダンスの基本は、1拍目、3拍目が、”沈み(down)”で、2拍目、4拍目が”戻り(up)”ですから。

この逆をYouTuber講師軍団は、”無料”で教えているわけです。

そうやって育った子は、幼児期の貴重な時間を、一体何年間、正反対の理論に洗脳されて実践していたのか?という事になるでしょう。

この問題に関心のある人は、黒人の身体の動きと母国語のリズム感を分析した、拙著”日本人のためのリズム感トレーニング理論”(リットーミュージック社刊)を”身銭を切って!”参照して見て下さい。

”只ほど高いもの”は、ないなあ、と思います。

個人的には、この功罪は、大変、大きいものだと思います。

何かを学ぶ際は、常にこの”発展性”を考えて見て下さい。

これをやっていたために、通用しない事がよりたくさんになった、という事にならない事が大事です。

PS:独習で学ぶスピードの100倍、お金を取って、ちゃんとした演奏のする先生から直接学ぶと早く学べます。

これが奥義です。

独習は、いつも同じ問題を抱えながら迷いが多い事ばかりですよね。

初心者の修行事で、迷いは、時間の無駄ですね。

参考にして下さい。

友寄隆哉

2021年8月17日

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